【南伊豆・前編】ビギナーでも大物を釣ってご馳走が食べられる夢の町


たくさんの温泉地や美味しい魚介で、旅行先としても人気の伊豆半島。
その南端にある「南伊豆町」に初めて行ってきました。

伊豆急行線の終点、伊豆急下田駅から更に南下した最南端に位置するこの町は、うっかりで大物が釣れてしまう夢と、まるで異世界のような美しい海岸と石の洞窟、そして南伊豆を愛する魅力的な人びとに溢れていました。

今回の旅の目的は伊豆の美味しい魚を釣って、地元のお店でご馳走にしてもらって食べること。そして南伊豆ならではの魅力的なスポットを見つけること。

まずは前半、釣って食べる編です。

初心者でも大物を狙える!夢の南伊豆海へ

せっかく南伊豆まで行くのだから、大物を狙ってみたい!と、「大物釣り」「初心者大歓迎」という、相反しそうな謳い文句を同時にかかげる釣り船屋「愛丸」さんに訪れました。

左:息子さんと私。右:親父さん。

こちらは親子で釣り船屋を営んでおり、お父さんは金目鯛などの漁師も兼任。南伊豆の海を知り尽くしていらっしゃいます。
息子さんは甘いマスクと優しい物腰で女性、子供にもとにかく人気。近所の小学生、中学生がすれ違うたびに挨拶をしていきます。

今回は息子さんの船で出港。
「何も持って来ていない」、「釣り方もわからない」ことを伝えると、ニコニコしながら「準備しておくんで、家の中で休んでいて下さい」と優しいお言葉。(船着き場の隣にご自宅があり、その居間を待合室として開放してくださっている。)

しばらくすると「準備できたんで、そろそろ行きましょうか〜」とお声が。さっそく船に乗り込んで出港します。

壮大な景色が続く

船が出てすぐに感動するのが、まるで日本じゃないような美しい景観の数々
ぽっかりと浮かんだいくつもの小島が美しくてかわいくて、思わず写真を連写してしまいます。

30分ほど走ると灯台のある小島が。

神子元島(みこもとしま)の灯台

神子元島(みこもとしま)といって、この灯台は世界歴史的灯台百選にも選ばれ、石造灯台では日本最古だそう。
思いがけず歴史的な建築物を見られて感動。そして、その傍で釣りスタートです。

常連さんたちに見守られて、釣りスタート

船には常連さんが3人と、南伊豆町で釣り人やビギナーの女性のために、釣り場近くでゲストハウスをはじめようと計画されている女性が乗船していました。

左:竿の使い方。右:エサの付け方。

常連さんたちは船長とも仲良しで、なんと常連さんたちが親切に釣り方や竿の使い方を教えてくれます
船長ももちろん教えてくれるのですが、常連さんが率先してビギナーたちをフォローしてくれるそう。温かいですね。

今回のエサは生きているイワシ。少しかわいそうですが、口元と背中に針を通して、そのまま海に泳がせます。
竿から糸を出してエサが底についたら(仕掛け・エサが底に着くと重みを感じなくなり、かつ糸が出なくなる)、2メートルほど糸を巻いて、1分から3分程まつ。
反応がなければ、そのままもう一度底まで落としてまた2メートルほど糸を巻く。

竿は手に持っていてもいいですが、少々重たいので、女性は竿を置けるキーパー(これも貸していただけます)に取り付けておくのが楽ちんです。

景色を楽しみつつ竿先に集中

比較的アクションが少ない釣りですが、かかれば大物!が狙えるとのことで、周りの風景を楽しみつつもドキドキしながら竿を見つめます。

すると開始20分ほど・・・

ぐぐっ・・ぐぐぐっ・・・ぐぐぐぐー!

私の竿がみるみる海に引き込まれていきます!
船長と常連さんが「かかったよ!巻いて巻いて!」と声をかけ、タモを抱えてサポートにきてくれました。

今回は大物を狙うので、電動で糸を巻いてくれる竿を使っています。レバー1つで魚は上がってくるのですが、せっかくなので魚の引きを感じたい!と、手動でハンドルを回します。

海底までは約60メートル。しかもなかなかの大物のようで、巻いているうちに右の二の腕が悲鳴を上げはじめます。
「手で巻きますとか言わなきゃよかったかな…」と後悔しつつも、楽しい苦しみにひーひー言いながら巻き続ける私。

そしてようやく姿を表したのが・・・

巨大な赤い魚が釣れた!

ドーーーーン!!!!!

こちらは「ウッカリカサゴ」といい、市場価格も高く非常に美味しい魚とのこと。
昔、著名な魚学者が魚の名前をつけていくときに、普通のカサゴと同じ魚種だと見間違い、ウッカリ発表し忘れてしまったために「ウッカリ」カサゴと名付けられたんだとか。(ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑を参照)

船長の目測で2kg。ウッカリカサゴの中でもなかなかのサイズです!

見よう見まね、常連さんたちにフォローしてもらいながらチャレンジする私にウッカリ釣られてしまうなんて、、、まさにウッカリカサゴ!
それにしてもさすがは南伊豆。海の幸に溢れています

感動する私の2つ隣で常連さんもHIT!同じくらいの巨大なウッカリカサゴを釣り上げました。

まさに初心者でも大物が釣れる!

この日は急激に気温が下がってしまった日で、海水温も下がってしまい、魚も動きがにぶくなってしまったようで、常連さんいわく「今年で1番厳しいかも」というコンディション。

「通常は3回糸を垂らせば1回釣れるくらい凄いんだよ!」と常連さんたちにお話を聞きつつ、それでももう1匹釣れて、私としては大満足の結果で終了しました。

なぜかお魚が増えている(笑)

港に帰って船長に借りたクーラーボックスを開けると、なぜか魚が3匹に!常連さんがこっそりプレゼントで入れてくださったそうです。
今日はあまり釣れなくてかわいそうだったから…と温かいお心遣いに感動!

これでかわいそうだなんて、普段の南伊豆は夢が詰まっているんですね。

港に戻るとお父さんが船長を務める船も戻って来ていました。こちらは金目鯛を狙いにいったそうなのですが、結果は。

高級な金目鯛がいっぱい

ドーン!と高級魚である金目鯛が山盛り。さすがです!

羨ましがっていたら、こちらでもまさかの常連さんが金目鯛を一匹わけてくださいました。皆さま、優しい・・・!

こんなに獲れたての美味しそうなお魚たちが手に入ったら自宅に配送したりせず、すぐに食べてみたい!
そんなご相談をしたところ、先ほど釣り船で一緒になった女性が素敵な情報を教えてくださいました。

<松原淑美さんご紹介>

大阪出身の神奈川育ち。釣り歴約8年で、4年前に釣りをしながら生活がしたくて南伊豆に移住!
「釣りガールを南伊豆に増やしたい」という目標をもち、地元の船長や漁師をはじめ、伊豆のアクティビティ事業者と連携して事業を検討中。
交流の拠点として子浦という地域の漁村で空き民宿を購入し、ゲストハウスオープンに向け準備をすすめている。

愛丸さんから車で5分ほどの場所にある「伽羅(きゃら)」という和食屋さんに、釣った魚の持ち込みをご相談できるというのです。

普段は数日前までに電話などでご相談し、ご都合があえば引き受けていただけるらしいのですが、今回は伽羅さんと仲のよい松原さんが直接お話してくださり、お店があいていたので特別に引き受けていただけました。

松原さんがお店に先に魚を届けておいてくださるということで、魚を預けていったん解散。
船長親子に「次回はもっと釣らせるから、またおいでー!」と嬉しい言葉をいただいてお別れします。

南伊豆の海の幸を味わい尽くす

外観写真を消してしまい、南伊豆町観光協会HPより転載

そして19:00、伽羅さんへ。
松原さんもお付き合いくださり、一緒に釣れた魚をいただきます。

最初にでてきたのが、真っ白でツヤツヤ!ウッカリカサゴのお刺身。

外側は真っ赤だけど、中は美しい白身

甘みのある身にしょうが醤油がよくあって、いくらでも食べられそう!臭みなんて少しもなく、しっとりした舌触り噛むほどじわ〜っと滲み出てくる甘みが病み付きです。

そして少し遅れて金目鯛のお刺身。

金目鯛は中もピンク

奇麗なピンクの身は獲れたてなのにトロッと脂がのっていて、滑らかな甘み
実は金目鯛には地キンメと沖キンメがあり、沖キンメは何日か遠征して漁をする方法とのこと。それに比べてこの辺りの地キンメは日帰り獲れたてのため、より臭みもなく価値が高いそうです。

次に出て来たのは、巨大な魚卵の煮付け。

でっぷりしたお腹にこの子がいた!

2kgのウッカリカサゴのお腹に、なんと立派な卵が入っていたそう。
分かりにくいのですが、私の手のひらより2周りほど大きくて驚きました。
サイズが大きいためか薄膜がしっかりしていて、ぷりっとした噛みごたえ。そして噛んだ瞬間に細かい卵とたっぷり吸った煮付け出汁がぶわっと口中に広がって…美味しい!これは日本酒がいくらでも飲めそうです。

更にさらに、お待ちかねの煮付け。

ウッカリカサゴと金目鯛、夢の共演

ウッカリカサゴはしっかりとした身に煮付け出汁が照りっと絡み、金目鯛はふわっとした身に出汁がじゅわっと滲みこんで、甲乙付けられない美味しさ。どちらもとにかく美味しいです。
お頭、目の周りがまた絶品。釣れたてで臭みが全くなく、濃い旨味だけをとにかく味わう至福の時間。

そして最後に、ウッカリカサゴの天ぷら。

上品な味わいに柚子胡椒がクセになる。

天ぷらにすると身自体の脂が落ちて、さらに上品で淡白な味わいに。お塩だけでも美味しいのですが、お店の方にススメられて、自家製の柚子胡椒でいただくと、こちらも美味しい!
柚子胡椒のピリッとしたしょっぱさでウッカリカサゴの甘みが引き立ちます。


地元の日本酒もたっぷりいただき、幸せすぎる時間でした。

伽羅さんはご夫婦で営業されているのですが、とても温かくチャーミングなお2人。せっかく釣りを楽しみに来る人がいるなら美味しい状態で食べさせてあげたい…と、無理のない範囲で釣った魚の調理を引き受けてくださいます。

このときも松原さんと、どんな料理にすればもっと美味しくウッカリカサゴを食べられるか議論したり、地域の魅力をもっと伝えようと努力される姿に感動しました。

お2人での営業なので混み合うときなどは難しいですが、南伊豆に行く際には、ぜひ事前にご相談してみてはいかがでしょう。

松原さんも可能な範囲で南伊豆での釣りを切り口にした旅行プランにアドバイスくださるそうです!特に女性や家族連れ、ビギナーさんにオススメです。
私も今回、伽羅さんをはじめいろいろ相談に乗っていただき、本当に助かりました。
南伊豆海の本当の実力を体感しに、また絶対に戻ってきます。

後半はまるで異世界のような絶景へ。
【南伊豆・後編】本当は内緒にしたい…異世界のような絶景!

本プランの概要

<お勧めの時期>
年中
時期に寄って狙う魚が違います。詳しくは愛丸さんにお問い合わせください。
<お世話になったお店>
・釣り船屋 愛丸
・飲食店 伽羅
<全体の予算目安>
約18,000円
・乗船、竿などレンタル、仕掛け、エサで約14,000円
・調理と酒代で約4,000円(調理代の目安は1品1,000円〜)
※船の料金などは変更する可能性があるので、予約時に確認してください。
※飲食店での支払いは持込んだ魚の量や種類、ドリンクの飲んだ量などで異なります。
<スケジュール目安>
※季節によって最大1時間ほど時間が前倒しになります
6:00  南伊豆の釣り船屋に集合
    竿などレンタル
6:30  出港
7:15  レクチャーを受けて釣り開始
    時間はたっぷりあるので、自分のペースで休憩しながら楽しみましょう
13:00  釣り終了
13:45  帰港
14:15  いったん解散(魚をお店に届ける)
19:00  南伊豆特別コースを堪能
    18:00オープン、日曜がお休み
    釣った魚を先に届けて近くを観光したり、宿泊の場合は一度宿に戻ってお風呂に入るのがオススメ
※船や飲食店の営業時間は変更する可能性があるので、予約時に確認してください。
<オススメの持ち物>
・汚れて、濡れて良い服装(寒さや日焼けの対策はやりすぎなくらいで丁度いいです)
・100円均一で軍手やガーデニンググローブを買っていくと、魚や針で手を傷つけるのを防げます。親指、人差し指、中指の第一関節あたりまで切り取っていくと、細かい作業がしやすいです。
・100円均一で先の長いペンチなどを買っていくと、魚が針を飲み込んでしまったときなどに外しやすいです。
・★酔い止めは普段酔いにくい人も必ず飲むようにしましょう。アネロンが特にオススメです。
・タオルがあると、魚をつかんだり、汚れを拭いたりするのに便利です。貸してくれる釣り船屋さんもあるので、予約の際に確認するのがオススメです。
・★船の上で食べ物、飲み物の販売はありません。船に乗っている時間を計算し、予め購入していきましょう。
<その他>
・本プランは必ず魚が釣れることを保証するものではありません。自然が相手であることをご承知下さい。