「東京湾の宝石」。なんとこれは、東京湾の“マダコ”に付けられた呼称だそうです。
あのヌメヌメ・にょろにょろした風貌からは想像しづらいですが、とにかく「美味しい・高い・希少」ということで、そんな風に呼ばれるようになったそう。
確かにマダコはお店で買うとなかなか高値。お腹いっぱいに食べるのは難しいかも…ということでフグに続いて、高級魚介“マダコ”を釣ってお得に食べちゃおう!というプランに挑戦してきました。
竿を使わない、昔ながらの釣り方も独特で楽しい♪初心者さんに優しい釣船さんを発見してきたので、ぜひチャレンジしてみてください。
初心者歓迎!雑色の「ミナミ釣船」
訪れたのは京急線・雑色駅。ここから徒歩10分弱にあるのが、釣り船屋「ミナミ釣船」さんです。
商店街の途中にある店舗で先に受付け・支払い。その後、更に徒歩5分程にある係留所へ向かいます。
ミナミ釣船さんは初心者さんに優しく、釣りに必要な道具はレンタルOK。消耗品もその場で購入できるので、事前準備がいりません。クーラーボックスも借りられるので、持ち帰り用の保冷バッグだけ持っていけば大丈夫です。
今回狙うのはマダコ。いつもなら釣りといえば竿を借りますが、なんと東京湾のタコ釣りは竿を使いません。
釣り船で借りるのは、こちらの糸の先に“オモリ”と“蟹が括り付けられた熊手”のようなものが付いた特殊な道具。
そして釣ったタコが逃げないように閉じ込める網です。
いったいこれらの道具を、どのように使ってタコを釣るのか?
検討もつかないと思いますが、ご安心を。ミナミ釣船さんでは出航前に船長からのアドバイスタイムがあります。
初心者さんは、お願いすれば釣り場で無料レッスンもしていただけます。
準備が整い、船長のアドバイスが終了したら、いよいよ出発。かわいらしい水門をくぐって、マダコがいる釣り場へ向かいます。
東京湾の宝石、マダコを釣ろう!
この日は30分ほどかけて釣りスポットへ。到着したらさっそくレッスンをしていただきます。
先ほどの道具が先端についた紐を海の中へ垂らし、底までスルスル落とします。底に着くと手先に“トン”と振動があり、紐がストップするので、それが合図。
その後は指先に紐を引っ掛けて、海底を軽くトントン叩くように上下させます。
これは動きでタコにアピールするというより、海底の凸凹に道具が引っ掛からないよう動かし続ける必要があるそう。
できるだけ海底にエサを這わせるように。だけれど凹凸に引っ掛かってしまわないようにするのがポイント。
タコが来ると、布が覆い被さるような“モサ〜〜…ヌメ〜〜…”といった感覚があるので、そうしたら少し待って糸を上にぐっと引き、針にタコを引っ掛けて海上まで手繰り寄せるそう。
初挑戦で感覚がわからりませんが、とにかくチャレンジスタート!
道具が海底についたら、指先で糸を上下させます。
隣のお兄さんもタコ釣りは初めてらしく、「あれ?これ海底ついてますかね?難しい〜」と笑いながら、とにかく指を動かし続けました。
時おり「糸が重くなった!」と思ったら、海底の凹凸にぶつかっただけ…なんてことも多数。凹凸にハマってしまった際は、無理に引っ張ると糸が切れてしまったり、指先をケガしたりするので、船のスタッフさんに助けてもらいます。
そんなこんなで1時間ほど。船ではチラホラ「釣れた〜!」という声が聞こえますが、私にはなかなかHITがこず。???が頭の中に並んでいたとき、ついにきました。“モサ〜〜…ヌメ〜〜…”という、不思議な感覚。
「わ!タコかも!」と叫んで持っていた糸をグイッと上へ。確かに糸に重みを感じます。
そのまま両手でスルスル糸をたぐり寄せると…
いた〜!マダコです。
威嚇するように足を拡げるタコ。怖くて笑顔がひきつる私。
釣れた喜びと同時に、ヌメヌメと迫り来るマダコに恐怖を感じます。
なんとか網の中にタコを入れて、一安心。
釣れるまでは、海底をトントンする感覚も、マダコがHITしたときの感覚も、わからないことだらけでしたが、一度釣ると納得。初めてタコ釣りに挑戦する方は、はじめは不安だと思いますが、なんとか一匹釣れるまでがんばってみてください。
その後は何となくコツもわかり、海底トントン、モサ〜〜…ヌメ〜〜…、グイッ、釣れた〜!を繰り返し。
最大1.5kgの大きなタコに脅えたり、
タコが腕に絡み付いてきて絶叫。船長に助けてもらったり、
網の口が完全に閉まっていなくて、タコが1匹脱走したり。
たくさんの珍騒動を起こしながらも、楽しくマダコ釣りを満喫することができました。
最終の釣果は7匹。総重量4kgほどのマダコをGETし、大満足で港へ戻りました。
マダコのお刺身をお店で頼むと数枚で1,000円弱するので、これは数万円分!ばっちり元を取ることもできました。
釣った魚を料理してくれる蒲田の蟻諏
※「花の蔵 北川」から移転されて、「蟻諏」になりました。写真・文章は「花の蔵 北川」当時のものです。「蟻諏」でも釣った魚の持ち込みにご対応いただけます。
ここまででも十分楽しいですが、やはり釣りの醍醐味は食べること…ということで、ミナミ釣船から徒歩20分ほど。JR蒲田駅から徒歩3分の和食屋「蟻諏(ありす)」さんへ。
こちらは釣った魚を持ち込むと、美味しく料理して食べさせてくれる素敵な和食屋さんです。
店主が石川県の出身で、石川を中心にこだわりの魚介や野菜などを各地から取り寄せ、創作和食にして出してくださいます。
(※前日までに要予約。当日はNGです。持ち込まれる魚は必ず「血抜き」をしてください。)
タコはヌメリや独特の臭いがあり、自宅で調理するのは慣れないうちは大変。こうしてプロに調理をお願いできるのは、本当に助かります。
マダコたちは、まず大量の塩で揉み込んで汚れ・ヌメリを落とされ、その後、内蔵などを出されます。
そしてすぐに食べる分は切り分けられ、一部は皮も剥かれます。先ほどまで生命だったマダコが、あっという間に食材へ。命をいただいているという実感が沸いてきます。
この場で調理しないタコたちは数秒だけボイルを。この日はお店に余裕があったため、持ち帰り用のタコの処理もお願いしちゃいました。(お店の状況でNGの場合もあります。)
あとは店主のお任せでお料理に。目の前でタコの足がバーナーで炙られるなど、食欲の沸く演出が繰り広げられます。
タコの刺身&炙り
最初に出てきたのは、生ダコの刺身と炙り、そして吸盤。
私はボイルよりも生のタコ刺しがダントツで好きなので、これだけでテンションが上がります!ほのかな炙りの香りもたまりません。
まずはシンプルに刺身から。
プリップリの吸い付くような弾力。そして噛む毎にどんどん沸いてくる濃い旨味。適度な塩味。お醤油が添えてありますが、必要ないくらいです。
フグのてっさのように、大皿にズラッと並べて出されたい美味しさ!がんばって釣ってよかった…とひと口目で既に感動してしまいました。
続いては炙り。こちらは口に運ぶと香ばしさが更に広がって、日本酒が恋しくなってしまいます。
軽く火を入れた表面は適度に柔らかく、中心は生タコの弾力が残り、両方の魅力を楽しめます。
吸盤はコリッコリ!噛む毎に音がするようで、思わず笑顔がこぼれます。
タコとセロリの梅肉和え
続いてはタコの頭を使った、セロリと梅肉の和え物。
セロリのシャクシャク食感と、タコのプリプリもちもちした食感が混ざり合います。
タコの濃厚な旨味を梅がさっぱりと包みこみ、夏のおつまみにピッタリでした。
タコのワタ煮
タコのワタ、つまり内蔵を煮込んで、墨を加えた餡をかけた一品。
こちらは肝や精巣、卵などさまざまな部位が入っていて、ひと口毎に味・食感の違いを楽しめました。
全体的に驚いたのは、まったく臭みがなく、とにかく濃厚・プリプリで美味しいこと。これは釣りたて新鮮な魚介ならではの食べ方。まさに釣り人の特権です。
ここまでで、使用したタコは1/7程度。いろいろな食べ方を楽しみましたが、まだまだ自宅でも食べられます。
店主オススメの料理も数点出していただき、お腹も心もいっぱいでお店を後にしました。
さいごに
今回は東京・大田区で「手釣りでタコを釣って、飲食店に持ち込み料理していただく」プランを体験してきました。
竿を使わず手で釣る…という独特な手法に、釣れたときの感動と驚き(恐怖?)。そして「東京湾の宝石」と呼ばれる高級食材“マダコ”を贅沢に食べられる喜び。
楽しいこと尽くしのタコ釣りに、ぜひみなさんもチャレンジしてみてください。
本プランの概要
- <お勧めの時期>
- 6月〜秋口。
お正月のおせち用に12月に船が出すお店もあるそうです。
- <本プランでお世話になったお店>
- ・釣り船:ミナミ釣船
・飲食店:蟻諏(電話:090-2562-6455、住所:東京都大田区蒲田5−1−4 山下ビル1階)
- <本プラン全体の予算目安>
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・釣り船:約10,000円(女性は約8,000円、中学生以下は約5,500円)
・調理:魚種やサイズ、数量で上下します。釣る魚が決まったら電話で目安を聞きましょう。
※料金などは変更する可能性があるので、予約時に確認してください。
- <本プランのスケジュール目安>
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※時間は上下します。下記は1つの目安としてご覧ください。
7:30 受付けをし、港に集合
8:00 船長のアドバイスタイム
8:15 出港
8:45 レクチャーしてもらい、釣りスタート(各自のペースで休憩などしながら)
15:30 釣り終了
16:00 帰港
17:00 飲食店へ移動し、料理してもらって食べる
※飲食店は必ず前日までに電話で予約してください。
※通常の営業時間は18:00〜です。お店の込み具合で早めに持ち込むなど相談してください。
- <オススメの持ち物>
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・100円均一で軍手やガーデニンググローブを買っていくと、魚や針で手を傷つけるのを防げます。親指、人差し指、中指を第一関節くらいまで切り取ると細かい作業がしやすい。更に手にフィットする薄手の手袋を中にすると、ニオイがつくのも防げます。
・★酔い止めは普段酔いにくい人も必ず飲むようにしましょう。アネロンが特にオススメです。
・タオルがあると、魚をつかんだり、汚れを拭いたりするのに便利です。貸してくれる釣り船屋さんもあるので、予約の際に確認するのがオススメです。
・★船の上で食べ物、飲み物の販売はありません。船に乗っている時間を計算し、予め購入していきましょう。
- <その他>
- ・本プランは必ず魚が釣れることを保証するものではありません。自然が相手であることをご承知下さい。